経営者が使える節税制度として、よく名前が挙がるものが3つあります。
- 経営セーフティ共済(倒産防止共済)
- 小規模企業共済
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
私はこの3つを全部使っています。小規模企業共済とiDeCoは7年前から、どちらも上限いっぱいまで積んでいます。
この記事では、実際の掛金、3つの使い分け、そして一番難しい「受け取り方」の問題について書きます。特に最後の部分は2026年に制度が変わったばかりで、古い情報がまだ大量に残っています。
3つは「効く税金」が違います
まず、この3つは似ているようでまったく別物です。誰が積むのか、どの税金に効くのかが違います。
| 誰が積むか | 効く税金 | 掛金の上限 | |
|---|---|---|---|
| 倒産防止共済 | 法人 | 法人税 | 月20万円 |
| 小規模企業共済 | 個人 | 所得税・住民税 | 月7万円 |
| iDeCo | 個人 | 所得税・住民税 | 月2.3万円※ |
※iDeCoの上限は立場によって変わります。私のように企業年金のない厚生年金加入者は月2万3千円です。自営業(第1号被保険者)ならもっと多く積めます。
ここが重要です。倒産防止共済は法人の税金、小規模企業共済とiDeCoは個人の税金に効きます。だから「どちらか一方」ではなく、両方使えます。
私の実際の掛金
| 制度 | 開始 | 掛金 |
|---|---|---|
| 小規模企業共済 | 7年前 | 月7万円(上限) |
| iDeCo | 7年前 | 月2万3千円(上限) |
| 倒産防止共済(事業法人) | 4年前 | 月20万円 → 上限800万円まで積み切り |
| 倒産防止共済(資産管理法人) | 今年6月〜 | 月5万円 |
小規模企業共済とiDeCoは7年前に同時に始めて、どちらも最初から上限です。妻も同じく小規模企業共済を満額で積んでいます。
iDeCoの中身はインデックスファンドです。個別株も投機的な商品も入れていません。60歳まで動かせない以上、時間に働いてもらう置き場所だと考えています。
順番はありませんでした。3つとも、使えると分かった時点で同時に埋めています。
小規模企業共済とiDeCoは「繰り延べ以上」です
別の記事で、倒産防止共済について「節税といっても課税の繰り延べにすぎない」と書きました。解約したときに戻るお金が利益として計上されるからです。
別の記事で、倒産防止共済について「節税といっても課税の繰り延べにすぎない」と書きました。解約したときに戻るお金が利益として計上されるからです。
小規模企業共済とiDeCoは、そこが違います。
この2つは、受け取るときに退職所得控除が使えます。退職金として受け取る場合、控除の枠内であれば税金がかからない、あるいは大幅に軽くなります。
つまり、
- 積むとき:掛金が全額所得控除になり、所得税・住民税が減る
- 受け取るとき:退職所得控除が効いて、税負担が軽くなる
入口と出口の両方で優遇されています。単なる先送りではありません。個人で使える制度としては、かなり強い部類だと思います。
だから私は、迷わず両方を上限まで埋めました。
デメリットは、資金が拘束されること
良いことばかり書いても仕方がないので、弱点も挙げます。最大のデメリットは、お金が長期間動かせなくなることです。
| 制度 | 拘束の内容 |
|---|---|
| 小規模企業共済 | 20年未満で任意解約すると元本割れする |
| iDeCo | 原則60歳まで引き出せない |
特にiDeCoは、どんな事情があっても途中で下ろせません。小規模企業共済も、短期でやめると払った額を下回ります。
ただ、私はここをあまり気にしていません。理由は単純で、最初から退職金だと思って積んでいるからです。
使う予定のあるお金を入れれば、拘束は苦痛になります。使う予定がないお金を入れているだけなので、動かせなくても困りません。
逆に言えば、手元の現金に余裕がない状態で上限まで積むのは危険だと思います。不動産を買うときも事業に投資するときも、必要なのは動かせる現金です。そこを削ってまで積む制度ではありません。
本当に難しいのは「受け取り方」です
ここからが、この記事で一番書きたかった部分です。
私は3つとも「退職金として受け取る」つもりでいました。ですが調べていくと、そう単純ではないことが分かってきました。
退職所得控除は、重複して使えません
退職所得控除は、勤続年数(加入年数)に応じて枠が決まります。ところが複数の退職金を近い時期に受け取ると、この枠が重複調整されます。
経営者の場合、退職所得として受け取りうるものが複数あります。
- iDeCoの一時金
- 小規模企業共済の共済金
- 法人からの役員退職金
これらを同じ年、あるいは近い年にまとめて受け取ると、控除を使い切れません。受け取る順番と間隔を設計する必要があります。
2026年1月から「10年ルール」になりました
ここが特に注意すべき点です。
以前は、iDeCoを一時金で受け取ってから5年空ければ、退職金のほうでも退職所得控除をあらためて使えました。いわゆる「5年ルール」です。
これが2026年1月から10年に延長されました。
つまり、iDeCoを60歳で受け取ったら、役員退職金は70歳以降にしないと控除がフルに使えないということです。5年のつもりで計画していた人は、前提が崩れます。
ネット上には、まだ「5年ルール」のまま書かれた記事が大量に残っています。この論点を調べるときは、必ず情報の日付を確認してください。
ここは税理士と詰めます
正直に書くと、私自身、まだ受け取り方まで設計しきれていません。
何歳で何を受け取るか、法人の退職金をいつ出すか、資産管理法人の倒産防止共済をいつ解約するか。これらは全部つながっていて、単独では決められません。
積むのは簡単でした。上限まで入れるだけです。難しいのは崩し方のほうで、ここは税理士と相談しながら決めていくつもりです。
同じことが倒産防止共済にも言えます。あちらも解約金が利益として計上されるので、出す年を選ぶ必要があります。共済も年金も、入口より出口が難しい制度です。
どれから埋めるべきか
私は3つ同時に始めましたが、優先順位をつけるなら、こう考えます。
- 小規模企業共済 — 入口も出口も優遇があり、上限も大きい
- iDeCo — 同じく両側で優遇。ただし60歳まで完全に動かせない
- 倒産防止共済 — 課税の繰り延べ。法人に利益が出ているときに
ただし、これは手元の現金に余裕があることが前提です。3つ全部を上限で埋めると、年間で相当な金額が動かせなくなります。
私の場合は不動産にも株にも資金を回しているので、これらは「余っているお金の置き場所」という位置づけです。節税のために事業や投資の資金を削るのは、順番が逆だと思っています。
まとめ
- 3つは効く税金が違うので、併用できる(法人税 / 所得税・住民税)
- 小規模企業共済月7万円・iDeCo月2万3千円を7年前から上限で継続中
- 小規模企業共済とiDeCoは入口と出口の両方で優遇があり、単なる繰り延べではない
- デメリットは資金拘束。使う予定のないお金だけを入れる
- 2026年1月からiDeCoの受け取りは「10年ルール」。古い情報に注意
- 積むのは簡単。難しいのは受け取り方の設計
なお、この記事は私一人の実例です。制度の内容も税制も改正されますし、最適な形は所得や家族構成、法人の状況によって変わります。実際の判断は税理士等の専門家にご相談ください。

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