別の記事で、こう書きました。
1〜2棟で終わるつもりなら、個人でも構わない。買い進めるつもりなら、最初から法人。
この判断自体は、今も変えていません。
ただ先日、資金調達の方法を調べていて、書いていなかったデメリットに気づきました。
個人向けの融資が、一つも使えません。
きっかけは「後から借り直せないか」でした
1棟目を買ったとき、自己資金を1,832万円入れています。私はオーナー経営者なので、どこの金融機関に持ち込んでも頭金は2割でした。
この1,832万円が手元から消えているので、次の物件の頭金が足りません。
そこで考えたのが、「すでに出した自己資金を、後から借り直せないか」ということでした。物件は買い終わっているので、そこを担保にするなり、別の枠で借りるなりできれば、次の資金が作れます。
個人向けのローンを調べてみました。
個人向けローンの条件は、かなり良い
例として、滋賀銀行の「スピードローン ジャストサポート」という商品を見てみます。全国対応で、来店も不要です。3つのタイプがあります。
| タイプ | 金利 | 限度額 | 期間 | 担保 |
|---|---|---|---|---|
| 多目的資金ローン | 3.075〜5.825% | 1,000万円 | 10年 | 不要 |
| 住宅関連ローン | 1.975〜5.825% | 1,500万円 | 20年 | 不要 |
| 不動産担保型 | 2.600〜5.525% | 9,500万円 | 35年 | 必要 |
※2026年8月時点の条件です。最新の内容は各金融機関でご確認ください。
無担保で1,500万円、20年、1.975%から。担保を入れれば9,500万円まで、35年、2.600%から。
私の1棟目は、いま金利4.05%です。この水準と比べると、条件は明らかに良い。
ところが、一つも使えませんでした
商品説明書を読んで、順番に弾かれていきました。
① 不動産担保型 → 担保に出せる不動産がない
商品説明書に、こう書かれています。
担保:ご本人または、三親等以内の親族が所有する不動産に、抵当権の設定が必要です。
「ご本人または親族が所有する不動産」です。法人所有は入っていません。
私の物件は、1棟目も2棟目も資産管理法人の名義です。個人としては、担保に出せる不動産を1つも持っていません。
② 住宅関連ローン → 自宅が賃貸
無担保で1,500万円、20年、1.975%から。条件としては一番魅力的です。
ただし使途は住宅関連(リフォーム、外構、住宅購入など)に限られます。
私は賃貸暮らしです。自宅を持っていないので、リフォームも外構もありません。使う対象がそもそも存在しませんでした。
③ 多目的資金ローン → 事業資金は対象外
最後の望みでしたが、これも明記されていました。
お使いみち:使途が明確で健全な目的資金(事業資金、投機等の資金は除く)
法人が保有する物件の資金は、事業資金です。個人向けの目的ローンでは調達できません。
なお、こうしたローンには「収益物件購入費用」という使途が用意されていることもありますが、そちらにも「不動産賃貸業が主業の方はお申込みいただけません」といった条件が付きます。あくまで個人が副業的に持つ場合を想定した商品です。
構造の問題でした
整理すると、こうなっていました。
| 私の状態 | 結果 |
|---|---|
| 不動産はすべて法人名義 | 個人の担保がない |
| 自宅は賃貸 | 住宅関連の枠が使えない |
| 物件の資金=事業資金 | 個人向けローンの使途に該当しない |
| 結論 | 個人の与信を、一切使えない |
個別の商品が合わなかったのではありません。私の資産構成そのものが、個人向け金融の外側にあったということです。
法人にしたことで、こういう形の副作用が出るとは考えていませんでした。
これは法人化のデメリットとして、あまり語られません
法人化の話は、たいてい税金の観点で語られます。
- 経費として認められる範囲が広い
- 家族に役員報酬を出して所得分散できる
- 後から名義を移すと諸費用が二重にかかる
私も別記事で同じことを書きました。そして、これらは全部その通りです。
ただ、そこに「資金調達の選択肢が減る」という項目は入っていませんでした。少なくとも私は、意識していませんでした。
個人には、個人にしか使えない枠があります
個人向けの融資は、条件が良いことが多いです。
- 金利が低い(今回見た商品は2%前後から)
- 無担保でもまとまった金額が出る
- 審査が早く、来店も不要なものがある
- 住宅ローンという、極めて低金利の枠もある
すべてを法人に寄せると、この枠を丸ごと放棄することになります。
私の場合、自宅も賃貸なので住宅ローンの枠も使っていません。個人の与信をまったく活用していない状態です。
それでも、法人にした判断は変えません
誤解のないように書いておくと、後悔はしていません。
個人で買ってから法人に移すと、登録免許税も不動産取得税もまたかかります。私の場合、1棟目の諸費用は約430万円でした。名義を移すだけで、これに近い金額をもう一度払うことになります。
買い進める前提なら、最初から法人という判断は今も正しいと思っています。
ただ「法人にすれば得」という単純な話ではなかったというだけです。得るものと引き換えに、失うものがありました。
これから法人化を考える方へ
知っておくといいと思うことを3つ挙げます。
① 全部を法人に寄せるかは、別の判断です
「法人でやる」と「すべて法人名義にする」は、同じではありません。
個人名義の物件を1つ残しておくという選択もあり得ます。そうすれば、個人の担保としても、個人向け融資の入口としても使えます。
② 自宅を持つかどうかも、資金調達に効きます
賃貸か持ち家かは、生活の話だと思っていました。ですが資金調達の面では、担保になる資産を持つかどうかという話でもあります。
持ち家があれば、住宅関連ローンの使途も生まれますし、担保にも使えます。ここは私が完全に見落としていた部分です。
③ 法人でやるなら、法人の道を掘るしかない
個人向けが使えない以上、選択肢は法人向けに限られます。
- 取引金融機関でのプロパー融資
- 保証協会付きの融資で実績を作る
- 日本政策金融公庫との協調融資
- 担保余力を使った追加融資
どれも個人向けほど手軽ではありません。時間をかけて、金融機関との関係を作っていく必要があります。
まとめ
- すでに出した自己資金を借り直せないかと思い、個人向けローンを調べた
- 3タイプとも使えなかった(担保がない/自宅が賃貸/事業資金は対象外)
- 原因は商品ではなく、自分の資産構成が個人向け金融の外側にあること
- 法人化のデメリットとして、「資金調達の選択肢が減る」はあまり語られない
- それでも法人にした判断は変えない。ただし単純に得な話ではなかった
法人化の記事を書いたときは、税金のことしか見ていませんでした。実際に資金が必要になって初めて、別の面が見えたというのが正直なところです。
なお、この記事は私一人の実例です。商品の条件は改定されますし、金融機関によって扱いも異なります。実際の判断は各金融機関にご確認ください。

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