2年前、法人で月50万円の生命保険に入りました。
1年9ヶ月ほど払い続けて、総額はおよそ1,060万円。そして解約しました。戻ってきたのは約820万円です。
差し引き、およそ240万円が消えました。
この記事では、なぜ入ってしまったのか、どうやって「これはおかしい」と気づいたのか、そしてなぜ損を確定させてでもやめたのかを書きます。同じ提案を受けている経営者の方の判断材料になれば幸いです。
きっかけは「今期、利益が出そうだ」でした
その年、法人の税引前利益がかなり出そうな見込みでした。
経営者なら分かると思いますが、この状況になると「何か経費を作れないか」と考え始めます。私もそうでした。決算まで時間がない中で、節税策を探していたんです。
そこへ、付き合いのある保険の営業から提案が来ました。
「節税になって、投資にも積立にもなります」
提案されたのは、大手生命保険会社の商品でした。内容はこうです。
- 死亡保障は1億円 × 2名(私と妻)
- 保険料は月50万円
- 節税になる
- しかも投資にも積立にもなる
当時の私には、保険の知識がほとんどありませんでした。言われるがままに聞いて、素直に「いいじゃん」と思ってしまった。
今なら分かります。「節税」「投資」「保障」を1つの商品に詰め込んだものは、まず疑ったほうがいい。ですがそのときは、むしろ「全部まとめて面倒を見てくれるなんて便利だ」と受け取りました。
そもそも、保険料は「2つの箱」に分かれます
加入したあとで自分なりに調べ始めて、まずここでつまずきました。払った保険料がどこへ行くのか、私は理解していなかったんです。
法人保険の保険料は、会計上こう分かれます。
| 経費の箱 | 貯金の箱 | |
|---|---|---|
| 会計上の科目 | 保険料 | 保険積立金 |
| どこに載るか | 損益計算書 | 貸借対照表 |
| 性質 | 払った瞬間に消える | 会社の資産として残る |
どちらに何割入るかは、商品のタイプで決まります。そして「節税になる」と言われる商品ほど、経費の箱に多く入る設計になっています。
経費が増える。利益が減る。だから税金が減る。理屈はその通りです。
ただ、経費の箱に入ったお金は、返ってきません。ここを分かっていませんでした。
分解して考えたら、全部見えてきました
この手の商品を評価するときのコツは、3つの機能に分解して、それぞれ単体で比べることだと思っています。
「節税+投資+保障」がセットになっていると得に見えます。でも1つずつ、他の手段と比較するとどうなるか。
① 死亡保障 → 掛け捨てなら10分の1以下
1億円の死亡保障。金額だけ聞くと立派です。
ですが、同じ1億円の保障を掛け捨ての定期保険で買ったらいくらか。調べてみると、月50万円とは桁が違いました。10分の1以下で足ります。
つまり、保障そのものにかかっているコストは、払っている金額のごく一部でしかない。残りは保障以外の何かに使われているということです。
② 節税 → ただの繰り延べにすぎない
次に節税の部分です。
保険料で経費が増えて、その年の税金が減る。これは事実です。ただし解約したときに戻ってくるお金は、利益として計上されます。そこでまた課税されます。
払うときに減らして、戻すときに増える。税金が消えたわけではなく、払うタイミングを先送りしただけです。
「節税」という言葉から想像するものと、実際に起きていることは違いました。永久に税金が消える商品など存在しません。
③ 投資 → 自分でインデックスを買えばいい
最後に「投資にもなる」という部分です。
これが一番はっきりしていました。投資がしたいなら、自分で投資信託を買えばいい。オルカンでもS&P500でも、信託報酬は年0.1%前後の世界です。
保険という包装紙に包まれた瞬間、そこに保険会社の取り分が乗ります。同じ運用をするなら、包装紙がないほうが有利に決まっています。
残るのは、保険会社の手数料
3つとも、単体で比べると他の手段に負けていました。
- 保障がほしい → 掛け捨ての定期保険のほうが安い
- 税金を先送りしたい → 倒産防止共済のほうが条件がいい
- 投資したい → 自分でインデックスを買うほうが手数料が安い
ではなぜ、わざわざ全部を1つにまとめた商品が存在するのか。まとめると比較しにくくなるからだと思っています。
3つがセットになっていると、「保障だけなら他社のほうが安い」とは言いにくい。「運用利回りが低い」とも言いにくい。比べられない形にすることで、その差額が手数料として成立している——私はそう理解しました。
「今やめると損しますよ」と言われました
解約を申し出たとき、当然ながら引き止められました。
今解約すると損しますよ。もう少し続ければ返戻率が上がります。
これは事実です。この手の商品は、返戻率が数年〜十数年かけてゆっくり上がっていく設計になっています。早くやめるほど損が大きい。
ただ、この説得には決定的な問題があります。
「今やめると損」は、いつ言っても成立してしまうのです。1年後に解約しようとしても、同じことを言われます。5年後でも同じです。
そして待っている間、資金は拘束され続けます。その間に自分で運用していれば得られたはずのリターンも失われます。
それでも解約しました
結果はこうです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 加入期間 | 約1年9ヶ月 |
| 月額保険料 | 50万円 |
| 払込総額 | 約1,060万円 |
| 解約返戻金 | 約820万円 |
| 返戻率 | 約77% |
| 差し引き | 約240万円のマイナス |
240万円は、決して小さい金額ではありません。
それでも私は、損切り一択だと判断しました。理由は単純です。
続けても、損が拡大するだけだと分かったから。
すでに払った240万円は戻りません。それは終わった話です。考えるべきは、これから毎月50万円を払い続けるかどうかでした。
3つに分解した結果、どの機能を取っても他の手段に劣ることは分かっていました。負けると分かっている場所に、これ以上お金を入れる理由はありません。
これは、いい人生経験でした
240万円は、授業料としては高すぎます。それでも、いい経験だったと思っています。
学んだのは3つです。
- 複数の機能がセットになった金融商品は、分解して単体で比べる
- 「節税」の多くは、課税の先送りにすぎない
- 知らない分野で「言われるがまま」に判断しない
特に3つ目です。私は経営者として数字を扱ってきたつもりでしたが、保険については何も知らないまま契約書にサインしていました。相手が悪いのではなく、自分が調べていなかった。ここは反省しています。
では、法人の節税は何を使うのか
今の私が使っているのは、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)です。
比較するとこうなります。
| 倒産防止共済 | 節税保険 | |
|---|---|---|
| 掛金の損金算入 | 全額 | 一部のことが多い |
| 戻り | 40ヶ月で100% | ピークまで数年〜十数年 |
| 金額の変更 | 月5,000円〜20万円で自由 | 基本的に固定 |
| 手数料 | なし | 保険会社の取り分がある |
どちらも「課税の繰り延べ」である点は同じです。だったら、条件のいいほうを選ぶだけです。
私は事業を営む法人で、この共済を上限の800万円まで積み切りました。その話は別記事に書いています。
まとめ
- 月50万円の法人保険に約1年9ヶ月加入し、約240万円の損を出して解約した
- 保険料は「経費の箱」と「貯金の箱」に分かれ、経費の箱に入った分は戻らない
- 「節税+投資+保障」は分解して単体で比べると、どれも他の手段に負けていた
- 「今やめると損」は、いつ言っても成立する。だから判断基準にならない
- 負けると分かっている場所に金を入れ続けない。損切り一択
もし今、同じような提案を受けている方がいたら、その場でサインせず、3つに分解してみてください。それだけで判断できることが多いはずです。
なお、この記事は私一人の実例です。保険商品にはさまざまな種類があり、目的によっては合理的な選択になる場合もあります。税制も改正されます。実際の判断は、税理士等の専門家に相談したうえで行ってください。

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