不動産投資を始めるとき、最初に迷うのが「一棟か、区分か」だと思います。
私は2023年10月、6,700万円の一棟マンションを買いました。ただし区分も真剣に検討したうえでの結論です。
この記事では、一棟を2年9ヶ月運用して実際に起きたことをもとに、「これが区分だったらどうなっていたか」を具体的な金額で書きます。一般論ではなく、実額での比較です。
結論:判断基準は3つだけ
先に結論を書きます。私が考える判断基準は3つです。
- 最初に出せる現金がいくらか
- 自分で動きたいか、任せたいか
- 土地の所有権にこだわりがあるか
利回りや将来性の話は、この3つを決めた後の問題です。逆にここが曖昧なままだと、どちらを選んでも後悔します。
前提:私は一棟オーナーで、区分は持っていません
最初に立場をはっきりさせておきます。
私が持っているのは一棟だけで、区分は所有していません。検討はしましたが、買っていません。だから区分を運用した実感は書けません。
その代わりにできるのは、一棟で実際に起きたことを「区分だったらどうだったか」に置き換えて書くことです。屋上防水に160万円払った人間が、区分の修繕積立金をどう見るか。そういう比較になります。
なお、当時私が見ていた区分は5,000万円前後・表面利回り5〜7%の物件でした。ワンルーム投資でよく出てくる2,000〜3,000万円台より、一回り大きい価格帯です。
違い① 最初に必要な現金
一棟で実際にかかった金額です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 物件価格 | 6,700万円 |
| 諸費用(仲介手数料・登記・取得税など) | 約430万円 |
| 投入した自己資金 | 約1,832万円 |
区分なら、物件価格が小さい分、自己資金も諸費用も比例して小さくなります。仮に同じ割合で計算すると、5,000万円の区分なら1,300万円台、2,500万円のワンルームなら700万円前後という感覚です。
ここは単純に、1件あたりに拘束される現金の量の差です。同じ自己資金があるなら、区分は複数戸に分散でき、一棟は1件に集中します。
違い② 修繕が来たとき、誰が払うか
ここが、一棟を持って一番実感した差です。
2025年、屋上防水工事に160万円かかりました。さらに室内リフォームで60万円。合わせて220万円の臨時支出です。
私の物件の手取りは、修繕がない年で月15万円ほど。つまり160万円の修繕1回で、1年分の利益がまるごと消えます。
区分なら、これは起きません。管理組合が修繕積立金として毎月徴収し、大規模修繕はそこから支払われるからです。ある日突然160万円の請求書が来ることはありません。
買う前の私は、正直なところ「修繕積立金は毎月出ていくだけでもったいない」と思っていました。実際に屋上防水を払ってみて、見方が変わりました。あれは保険です。
ただし裏返しもあります。一棟は積立の金額もタイミングも自分で決められます。管理組合の方針に縛られず、必要なときに必要なだけ判断できる。この自由度を価値と見るかどうかが、分かれ目です。
違い③ 融資の出方
私の融資条件です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資額 | 5,300万円 |
| 融資割合(LTV) | 約79% |
| 返済期間 | 18年 |
| 物件の築年数 | 築33年 |
築33年で18年の融資が出たのは、この物件の土地値が6,030万円(価格の9割)だったからだと考えています。建物が古くても、担保としての評価は土地で取れる。だから期間が伸びました。
区分の場合、担保評価に占める土地の割合はごくわずかです。評価は建物と収益性が中心になるため、築年数の影響を受けやすくなります。
私の場合、頭金2割は選択ではありませんでした
もうひとつ、属性の話をしておきます。
私は自分の法人の代表です。金融機関から見ると、勤務先と年収がはっきりしている給与所得者に比べて、評価しづらい立場になります。結果として、どこの金融機関に持ち込んでも「頭金は2割」でした。
ここで効いてくるのが物件規模です。同じ「2割」でも、
- 6,700万円の一棟なら、1,300万円以上
- 2,500万円の区分なら、500万円程度
絶対額がまったく違います。私のように頭金割合を下げられない属性の場合、一棟は1件ごとの現金負担が重く、買い増しのペースが落ちます。
逆にサラリーマンの方で高い融資割合が引ける場合は、一棟でも現金負担を抑えられます。同じ「一棟か区分か」でも、属性によって答えが変わるのはこの部分です。
違い④ 手間とストレス
「一棟は手がかかる」とよく言われます。実際どうだったかを正直に書きます。
やり取りの頻度
管理会社からは月1回、メールで報告が来ます。これは定型なので負担ではありません。
電話は波があります。まったく無い月もあれば、月に5〜6回やり取りする月もあります。
そして管理会社からの電話は、たいてい「何かが壊れた」「水漏れが発生した」という修繕の連絡です。着信を見た時点で「またか」と気分が落ちます。これは正直なところです。
なお、入居者からのクレーム対応は管理会社がやってくれるので、そこは問題ありません。一棟だからといって、住民と直接やり合うことにはなりません。
一番大変なのは「修繕の判断」です
手間の本体は、電話の回数ではありませんでした。直すかどうかを決めることです。
修繕は、やり出したらきりがありません。古い建物なら直せる箇所はいくらでもあります。そこで必要になるのが投資家としての判断です。
「この金額をかけて、家賃アップや入居付けにつながるのか」
直したい気持ちだけで判断すると、いくらでも出ていきます。かといって節約しすぎると入居が決まらない。この線引きを毎回自分で決めるのが、一棟で一番神経を使う部分です。
業者選定も自分でやります
修繕業者を管理会社に任せると、単価は高めになります。だから金額が大きいものは、他の業者に相見積もりを取ります。
これが正直、面倒です。連絡して、現地を見てもらって、見積もりを比べて、決める。単価の低い修理は管理会社に任せますが、大きい工事は自分で動いたほうが確実に安くなります。
区分なら、この作業はほぼ発生しません。手がかからないというのは、本当です。
私が区分を見送った本当の理由
ここまで書いた通り、区分には明確な強みがあります。それでも私が一棟を選んだ理由は2つでした。
理由1:土地が実質的に自分のものにならない
区分マンションでも、厳密には敷地利用権という形で土地の権利を持ちます。ただし持分はごくわずかで、自分の土地という実感はありません。
これは完全に気持ちの問題です。合理的な理由ではありません。ただ、土地が自分のものにならない投資に、どうしても乗り切れませんでした。
結果的に、この感覚は間違っていなかったと思っています。築33年の物件で18年の融資が出たのは、土地に価値があったからです。土地は担保になります。
理由2:「何もしなくていい」が、面白くなかった
こちらのほうが、自分にとっては決定的でした。
区分は手がかかりません。それは大きなメリットです。ただ私は、それを魅力に感じませんでした。
理由は単純で、「何もしなくていい投資」は、すでに株でやっているからです。
私は米国株を中心に投資をしています。インデックスを買って、あとは放置する。値動きを追いかけず、時間に働いてもらう。これはこれで完成された手法だと思っています。
その上でもう一つ「何もしない投資」を増やしても、自分の中で役割が重なるだけでした。不動産では、積極的に動きたかった。
修繕を判断して、相見積もりを取って、家賃を上げられるか考える。手間だと言われる部分こそ、自分がやりたかったことでした。株では絶対にできない部分です。
だから私にとっての判断は「どちらが儲かるか」ではなく、「株と不動産に、それぞれ何をさせたいか」でした。
区分から始めるべき人
ここまでを踏まえて、区分が向いていると思うのはこういう方です。
- 最初に出せる現金を抑えたい
- 本業が忙しく、修繕の判断や相見積もりに時間を使えない
- 大きな修繕を自分で背負いたくない
- 手間より安定を優先したい
- 1件目で失敗したときのダメージを小さくしたい
特に2つ目が大きいと思います。私が一棟で使っている時間の大半は、修繕の判断と業者とのやり取りです。ここに時間を割けないなら、一棟は苦痛にしかなりません。
「何もしなくていい」は、多くの人にとっては純粋なメリットです。私がそう感じなかったのは、既に株で同じことをやっていたからにすぎません。
一棟を狙うべき人
- 土地が欲しい
- 自分で動くことを楽しめる
- まとまった現金を1件に集中させる判断ができる
- 戸数を一気に増やしてスピードを取りたい
- 突発的な修繕を自分で判断したい
2つ目を「楽しめる」と書いたのは意図的です。耐えられるかどうかではなく、面白いと思えるかどうかだと思っています。面白くない人にとっては、一棟の手間はただのストレスです。
それでも迷うなら
ここまで書いておいてなんですが、この判断は文章を読むだけでは決まらないと思います。
私自身、最終的に一棟を選んだのは、物件を見て、融資条件を聞いて、数字を並べたうえでの判断でした。頭の中だけで比較していた段階では、ずっと迷っていました。
もし迷っているなら、まずは具体的な物件と条件を見てみることをおすすめします。自分の属性でいくら融資が出るのか、月々いくら残るのか。数字が出た瞬間に、判断できることが多いです。
最後に念のため書いておくと、この記事は私一人の実例です。物件も属性も違えば結論は変わりますし、私の選択が正解だったと証明されたわけでもありません。判断はご自身の状況に合わせてください。

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