不動産を買うとき、個人名義にするか、法人名義にするか。1棟目を買う前に必ず通る分岐です。
私は資産管理法人(合同会社)を作って、そこで6,700万円の一棟マンションを買いました。
この記事では、なぜ法人にしたのか、いつ作ったのか、設立にいくらかかったのか、そして今その法人で実際にやっている節税までを書きます。制度の解説ではなく、実際にやっていることの話です。
結論:拡大する気があるなら法人一択
先に結論です。
- 1〜2棟で終わるつもりなら、個人でも構わない
- 買い進めるつもりなら、最初から法人
判断のポイントは「今どちらが得か」ではありません。後から変更できるかどうかです。ここを見落とすと、あとで余計な出費をすることになります。
なぜ個人ではなく法人だったのか
理由① 後から法人名義にするのは現実的じゃない
これが決定打でした。
「とりあえず個人で買って、増えてきたら法人に移せばいい」と考える人は多いと思います。私も最初はそう思いました。
ただ、個人から法人へ名義を移すというのは、実質的に個人が法人に売却するということです。登録免許税も不動産取得税も、また最初からかかります。場合によっては譲渡所得税も出ます。
私の場合、購入時にかかった諸費用は約430万円でした。名義を移すだけで、これに近い金額をもう一度払うことになります。
どうせ買い進めるなら、最初から法人で持つ。それ以外の選択肢はありませんでした。
理由② 経費の範囲と、将来の所得分散
もうひとつは税金面です。
法人は個人よりも経費として認められる範囲が広くなります。また規模が大きくなれば、家族に役員報酬を出して所得を分散するという選択肢も持てます。同じ所得でも、一人で受け取るより分散させたほうが税率は下がります。
ただし正直に書いておくと、この所得分散は、私はまだやっていません。1棟の段階では規模が足りないからです。あくまで「法人にしておけば将来使える手段」という位置づけです。
では今なにをやっているのか。それは後半に書きます。
法人を作ったタイミング:売買契約の「前」
タイミングを検索している方が多いと思うので、はっきり書きます。
私が法人を設立したのは、買う物件が決まって、売買契約を結ぶ前でした。
順番としてはこうなります。
- 物件を探す
- 買う物件が決まる
- 法人を設立する
- 売買契約を結ぶ(契約者は法人)
- 融資を受けて決済
物件が決まる前に作っても、実体のない法人ができるだけです。かといって契約後では遅い。買うものが決まった時点で動き出すのがちょうどいいタイミングでした。
設立は自分でやりました(費用は約6万円)
設立は代行に頼まず、「会社設立ひとりでできるもん」というサイトを使って自分でやりました。
費用は6万円台だったと記憶しています。合同会社は登録免許税が6万円からで、株式会社よりも設立コストが安く済みます。電子定款に対応しているサービスを使えば、定款の印紙代4万円もかかりません。
資産管理法人であれば、株式会社にする必要はほとんどないと思います。対外的な信用が重要な事業をやるわけではなく、物件を保有するための器だからです。
設立代行に頼めば10万円前後かかりますが、自分でやれば実費だけで済みます。ただし書類作成や法務局とのやり取りは自分で進めることになるので、そこに時間を使えるかどうかで判断してください。
私が今やっている節税は、役員報酬ではありません
ここからが本題です。
役員報酬は、自分にも払っていません
家族どころか、自分にも役員報酬を出していません。利益は法人に残しています。
理由は単純で、役員報酬にすると、そこにまた社会保険料や所得税がかかるからです。法人から個人へお金を移した瞬間に、別の税金が発生します。移す必要がないなら、移さないほうがいい。
不動産は「残る利益」が読みやすい
ここが、事業会社と資産管理法人の大きな違いだと感じています。
普通の事業は、売上が読めません。良い月も悪い月もあり、年間の着地は最後まで分からない。
一方で家賃収入は、売上が立てやすい。入居者が入っていれば毎月ほぼ同じ額が入ってきます。返済額も固定資産税も保険料も決まっている。だから年間でいくら利益が残るかが、早い段階で計算できます。
読めるということは、逆算できるということです。
残る利益から逆算して、倒産防止共済を積む
私がやっているのはこれです。
年間で残りそうな利益を先に把握して、そこから逆算して経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の掛金を決め、毎月積み立てています。役員報酬を出す前に、まずこちらです。
この制度の使いやすさは、掛金の幅にあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 掛金の範囲 | 月5,000円 〜 20万円(5,000円単位) |
| 年間の上限 | 240万円 |
| 積立の上限 | 総額800万円 |
| 掛金の扱い | 全額を損金に算入できる |
| 解約したとき | 40ヶ月以上納めていれば全額戻る |
月5,000円から20万円まで、5,000円刻みで調整できる。ここが効きます。利益が読める不動産法人なら、「今年はこのくらい残りそうだから、掛金をここに設定する」というコントロールができます。
掛金を増やすのも減らすのも手続きひとつです。使い勝手のいい制度だと思っています。
出口も、不動産なら用意されている
ひとつ注意点を書いておきます。
倒産防止共済は解約したときに戻ってくるお金が利益として計上されます。つまり永久に税金が消えるわけではなく、課税を先送りしているという性質のものです。何も考えずに解約すると、その年に一気に利益が乗ります。
ただ、不動産を持っている法人にとっては、この出口が最初から用意されているようなものだと考えています。
私は2025年、屋上防水工事に160万円を使いました。築年数が経った建物を持っていれば、こうした大型修繕は必ずどこかで発生します。大きな支出が出る年に解約すれば、戻ってきた分と相殺できます。
いつ大規模修繕が来るか分からない事業と違い、不動産は建物の状態からある程度予測できます。積むタイミングと崩すタイミングを、自分で設計できる。ここが相性のいい理由です。
民間の「節税保険」には手を出しません
これは私の意見として書きます。
法人を作ると、節税を目的とした保険の話が必ず来ます。私は入っていませんし、入るつもりもありません。
理由は3つです。
- 税制改正で、保険料の全額を損金にできるケースは大きく制限された
- 返戻率がピークになる時期が限られていて、途中でやめると大きく損をする
- 長期間お金が拘束される(不動産投資は現金の機動力が重要)
倒産防止共済は掛金が全額損金で、40ヶ月納めれば全額戻り、掛金の増減も自由です。比べるまでもないと思っています。
なお、共済も保険も制度は改正されます。実際に倒産防止共済も、解約後の再加入について取り扱いが変わっています。最新の条件は必ず税理士に確認してください。
税理士はいくらかかるのか
法人にすると必ず増えるコストが、税理士費用です。ここも実額を出します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月額の顧問料 | 10,000円 × 12ヶ月 = 120,000円 |
| 決算料 | 60,000円 |
| 年間合計 | 180,000円 |
年18万円。これが法人を持つことの固定費です。
個人であれば、確定申告を自分でやれば0円で済みます。法人は決算申告が複雑なので、自分でやるのは現実的ではありません。
私の場合は、もともと別の法人で顧問をお願いしている税理士がいたので、そのまま資産管理法人もお願いしました。探す手間はかかっていません。
ただ、これから法人を作る方は税理士を探すところからになります。ここで意識しておいたほうがいいのは、不動産に詳しい税理士かどうかです。減価償却の取り方、修繕費と資本的支出の判断、共済の使い方。どれも不動産特有の論点で、慣れている人とそうでない人で差が出ます。
費用も事務所によって幅があるので、年18万円という数字はあくまで私の一例として見てください。
正直に書くと、1棟だけならメリットは薄い
ここまで法人の話を書いてきましたが、実感も正直に書いておきます。
今はまだ1棟なので、法人にしたメリットを大きく感じているわけではありません。
所得分散はまだ使っていません。経費の範囲が広いといっても、劇的に変わるほどの規模ではありません。倒産防止共済は効いていますが、これは個人事業主でも小規模企業共済という似た制度が使えます。
一方で、税理士費用が年18万円、確実に増えています。
面倒なことは特にありません。会社を持っているという感覚は、悪くないです。ただ「法人にすれば得をする」という単純な話ではないというのが、1棟の段階での正直な感想です。
それでも私が最初から法人にしたのは、繰り返しになりますが後から変えられないからです。1棟で終わるなら不要なコストですが、5棟6棟と増やすつもりなら、途中で切り替えるほうが高くつきます。
こういう人は法人、こういう人は個人
法人がいい人
- 3棟以上に増やしていくつもりがある
- 将来、家族に所得を分散させたい
- 年間の利益から逆算して、共済などで調整したい
- 年18万円の税理士費用を吸収できる規模を見込んでいる
-
- 1〜2棟で終わるつもり
-
- 小規模で、固定費を増やしたくない
-
- 確定申告を自分でやる前提でコストを抑えたい
個人でいい人
境目は「棟数を増やすかどうか」だと思います。そしてその判断は、1棟目を買う前にしておく必要があります。後から動かすと、諸費用をもう一度払うことになるからです。
なお、その後に気づいた法人名義のデメリットを、別記事にまとめました。個人向けの融資が一つも使えなくなります。
最後に念のため書いておくと、この記事は私一人の実例です。税制は改正されますし、最適な形は所得や家族構成によって変わります。実際の判断は税理士に相談したうえで行ってください。

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